気温や活動にかかわらず、必要以上にたくさんの汗をかいてしまう多汗症。日本では約４割の人が悩んでいるとも言われています。経験が無い人にとっては「たかが汗でしょ」と思うかもしれませんが、多汗症の悩みは想像以上に範囲が広く深刻で、社会生活をする上でも様々な不便があります。具体的にはどのような問題点や悩みがあるのでしょうか。症状の度合いや個人の体質や性格、生活環境によって当てはまらない場合もありますが、一般的におこりやすいものをご紹介しましょう。

多汗症には、全身の汗が多い全身性多汗症と、特定の部位だけの汗が多い局所性多汗症があります。特定の部位とは、手のひら、足のうら、ワキの下、頭部や顔が主です。全身性多汗症の人の場合はこれらの部位に加え、背中やお尻にもたくさんの汗をかきますが、人によって汗をかく部位や量には差があるようです。汗の多い部位ごとに、多汗症でおこりやすい問題と悩みをまとめてみました。

【手のひら】

• 汗が気になって人と手がつなげない
• 汗で手がすべり、ものを落としやすい
• プリントや書類を持つと濡れてしまう
• 紙に字を書くとき手を置いた部分がにじんでしまう
• パソコンのキーボードが濡れて打ちにくく、水気で壊れやすい
• スマホが使いにくい
• 指輪をすると手が汗でかぶれやすい

【足のうら】

• 靴下が濡れてしまう
• 足がすべって歩きにくい
• 靴ずれをおこしやすい
• 靴の中が汗で蒸れるのでにおいが気になる
• サンダルや下駄は靴よりすべるので危なくてはけない

【ワキの下】

• ワキの下がすぐに濡れて人目が気になる
• 汗ジミができやすいので色の淡い服が着られない
• ワキ毛の処理あとがかぶれやすい
• 汗が多いとワキがにおうのではないかと気になる

【頭部や顔】

• 汗でメイクが落ちる
• 目に汗が入りやすくコンタクトができない
• 汗の塩分で肌が荒れる
• 汗で髪が濡れてしまう

【背中やお尻】

• 外でふきとれない部分なのであせもができる
• 背中が濡れると風邪をひきやすい
• 外出時には着替えやタオルがたくさん必要になる
• 服に汗ジミがついたり白く塩をふいたりする

ここに書いた以外でも、多汗症によって不便を感じる場面は思っている以上にたくさんあります。その中でも、やはり人目が気になる、渡すものや手が濡れていることによって相手が不快に感じないかが気になる、においや不潔な感じに見られそうなことが気になるなど、対人関係に関わるものが深い悩みになりやすいようです。

多汗症であることで、様々なことを気にして人と関わるのが怖くなってしまったという人も少なくありません。多汗症は赤面症と少し似た部分があり、人に変に思われるのではと気にすれば気にするほど、汗をたくさんかいてはいけないと思えば思うほど、緊張が高まり自律神経の働きが乱れて状態がひどくなる悪循環におちいることがあります。

とくに一番人目を気にする思春期頃に発症すると、大人以上に悩みが深くなりやすいようです。決まりごとの多い学校生活では自由に着替えや衣類の選択もできず、周囲からからかいの対象となってしまうケースも多く、それによって心に傷を受け、社会にでるのが怖くなってしまったという人もいます。

汗をたくさんかくと体臭がくさくなりそうで気になるという人も多いようですが、多汗症の汗は基本的にほとんどが水分なので、汗自体にはあまりにおいがありません。においが出るのは、長い時間汗で濡れた衣服を放置し、そこに雑菌が繁殖するからです。汗やにおいへの適切な対処をすれば、周囲を不快にさせるほどのにおいがでることはほとんどありません。

しかし、汗をたくさんかいているから自分はくさいと思い込んでしまい、必要以上ににおいに敏感になっているケースもあります。周囲が気にするほどにおってはいないのに、自分自身では自分がとてもくさく感じるという状態は自己臭恐怖といって、精神的不調の表れと言われています。

多汗症には精神的な影響も大きく関わっていると言われているので、できるだけ汗対策をして、自分が快適に日常生活を過ごせるような工夫が大切です。可能なら着替えを用意し、タオルも持ち歩くようにします。現在は制汗剤や吸湿速乾・抗菌・防臭の下着もあるので、そのようなものを上手に活用しましょう。

多汗症は誰にでもおこり得ることで恥ずかしいことではありません。周囲の人に汗をかきやすいことを話し、多汗症をオープンにすることでかえって楽になることもあります。

いずれにしても、１人で抱え込んで悩みを深めてしまうことが一番辛いですよね。今は多汗症の治療も進んでいます。多汗症で悩んでいる人は、治療を行う専門のクリニックで相談だけでもしてみてはいかがでしょうか。専門家に悩みを話し、治療法や対策の情報が得られると心の負担も減らせます。自分での対処に限界を感じたら、専門家の力を借りてみましょう。

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