ワキから独特なにおいの汗をかく「ワキガ」体質には、生まれ持った汗腺の数の多さが関わっていると言われています。一人ひとり違う汗腺の数を左右する大きな要素は親からの遺伝。親がワキガ体質だから必ず子どももワキガ体質になるわけではありませんが、かなりの高確率で受け継がれるようです。

人の体の汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の2種類があり、ワキガの原因となるのはアポクリン腺の方です。アポクリン腺からかく汗は、体温調節の目的ではなく、自分の匂いを外に向けて発するフェロモンの役割が大きいと考えられています。そのため、アポクリン腺からかく汗がまったくの無臭の人はいませんが、アポクリン腺の数、汗の中に含まれる成分には個人差があり、その差によってワキガ体質かどうかが左右されます。

そのような体質や見た目の特徴などは「形質」といい、それらの情報は遺伝子の染色体に書きこまれ、代々親から子へと受け継がれていきます。本来は単一の形質だけが子に伝わるのではなく、両親の持っているそれぞれの形質が組み合わさって伝わっていきます。

しかし、形質の種類によって、表面に特徴として表れやすいものと表れにくいものがあり、表れやすいものの方が高確率で子どもに伝わっているような状態になります。例えば黒い目と青い目の間にできた子どもは、高確率で黒い目になります。本当は青い目の遺伝子も情報としては同じ確率で子どもに伝わっているのですが、黒い目の情報の方が表れやすい形質なので、表面上に青い目の特徴はあがらず、黒い目の子どもばかりが生まれてくる可能性が多くなります。

ワキガ体質を決める大きな要素であるアポクリン腺の数の多さはどうかというと、表れやすい方の形質です。そのため、片方の親だけがアポクリン腺の多い体質だったとしても、高確率で子どもには同じ特徴が表れ、両親ともがアポクリン腺の多い体質なら、さらに高確率でそれが受け継がれることになります。

ただ、アポクリン腺は性ホルモンとの関連が深く、こどもの頃にはワキガ体質であるかどうかはわかりません。それが目立ち始めるのは、アポクリン腺が活性化する小学校高学年～高校生頃にかけての第二次性徴が表れる時期ですが、最近は成長の早い子も増えているので、もっと早い段階でワキガのにおいに気づく場合もあるようです。

親自身がワキガに悩んだ経験があると、「子どもに遺伝していたら…」と心配になるかもしれませんが、親がにおいに敏感になっていると子どもにもそれが伝わってしまいます。ワキガ体質は必ず遺伝するわけではありませんし、アポクリン腺が多いからといって、絶対ワキガになるというわけではありません。他の要素や体質によってにおいの出方は違ってきます。

もしも、子どもにワキガのにおいが表れてきたとしても、今は昔に比べ、消臭効果の高いデオドランド剤や石けん、洗剤などもたくさんありますし、本格的に悩む年頃になれば治療も検討できます。お父さんお母さん世代の人達が思春期だった時代より、ずっとワキガの対策はしやすいと言えます。

ワキガは一つの体質であり、不潔なわけでもおかしいことのわけでもないことは、医学的な情報として知られるようになっています。親がワキガを正しく理解し大きくかまえていれば、いざ子どもが悩んだときにも、冷静な対処がしやすいのではないでしょうか。

子どもがワキガを自覚する前から親が反応してしまうと、子どもは自分が悪いように感じ、かえってワキガをコンプレックスに感じてしまう恐れもあります。子どもに気にしている様子がないうちはそっと見守っておきましょう。

もしも、ワキガによって誰かに何かを言われたとか、子ども自身が気にしている様子が見えるということがあれば、ワキガは体質の一つであって不潔なものではないこと、きちんと対策をすれば大丈夫なことを教えて安心させてあげましょう。

自分が悩んでいたなら、より子どもの気持ちが理解できるはずです。「自分のワキガ体質が遺伝したら…」と気になっている場合は、やみくもに心配せずに、その時に備えて、いいグッズや対策法、治療法などを調べて準備しておくと安心ですね。一番身近な親がワキガを理解しアドバイスしてくれるというのは、子どもにとっても、何よりの心強い支えとなるでしょう。

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